【海外研究】公共交通機関の利用を増やすための通勤者への社会規範ナッジ
概要
オランダの6つのバス路線を利用する客を対象に、バスの利用率を上げるための介入実験を行った。
介入群となる3つのバス路線では、「バスの利用者は環境に優しい人である」という社会規範メッセージが記載されたカードホルダーを無料で配布した。対照群では、環境に関するメッセージなどは書かれていないカードホルダーの配布を行った。
分析から、介入前から介入後にかけて対照路線と比較して、介入路線のバス利用者の1日あたり乗車回数が1.18回多くなる、という推定結果が得られた。
(出所:Franssens et al.(2021) , p3 Figure 1)
介入群で配られたカードホルダー(左)と対照群で配られたカードホルダー(右)。左のカードには「当然、公共交通機関を利用する。平日も週末も、サステイナブルに移動するのは当然です。(英訳:Naturally, I use public transport. During the week or during the weekends, it is natural you travel sustainably.’)」と記載されている。
対象者
主に自治体で環境や公共交通機関の担当をしている方
ひと言メモ!
「バスの利用は環境に良い!」という社会的メッセージを伝えるという、比較的簡単な介入でバスの利用率向上が見込める可能性を示した事例です。カードホルダーという日常的に使用するものにメッセージを記載したことで、メッセージが日常的に本人の目に入ることに加え、カードホルダーの利用によって、周囲の人に「環境に配慮している」ことを示すことができる点が、うまく行動変容を起こしていそうです。
日本においても、公共交通機関の利用促進は、環境面や人々の交通手段の確保といった観点から重要であると思うので、利用率向上施策の参考になるかもしれません。(大阪大学・野元)
参考
Franssens S, Botchway E, de Swart W, Dewitte S. Nudging Commuters to Increase Public Transport Use: A Field Experiment in Rotterdam. Front Psychol. 2021 Mar 11;12:633865