【海外研究】高校理科の授業に対する興味と成績の促進ナッジ
概要
高校生の「勉強へのモチベーション」と「成績」を向上させるために、介入を行った事例。アメリカ中西部の都市の2つの高校の1年生を対象に実験を行っている。
介入群の学生には、科学の授業時に毎回、「授業内で習ったことの有用性」と「現実の生活で使えそうな価値」を考えてまとめてもらうように指示した。対照群の学生には、授業で習ったことをまとめることだけを指示した。 結果、介入を受けた学生のうち、将来の成功への期待が低い生徒たちの間で、科学への関心も科学の成績も向上した。将来の成功の期待が高い生徒たちでは、有意差はないものの負の影響があった。
出典:Hulleman, Chris & Harackiewicz, Judith. (2009). p.1410 Fig. 1に加筆
対象者
主に自治体の教育関係担当部署の方
ひと言メモ!
二つの点から非常に応用しやすく、興味深いナッジだと思いました。 ①「自分事にしてほしいこと」に応用できるナッジである点。自分事にして考えてもらうために、自分の生活と促進したいことの関連性を考えてもらう段階を作ることで効果が得られるというのは応用しやすいと思います。 ②異質性が存在する点。この事例では、将来への成功の期待が低い人の間でナッジにプラスの効果がありました。このナッジが効いた理由が、そういった人がふだんは具体的な将来のイメージを描けていないからというものであれば、このナッジは他の場面でも有効に機能しそうです。
例えば、防災を促進する際に政策的に行動変容を促したいのは防災への関心が低い人です。そういった人々は災害が起きたらどういった問題が起きて、何に困るのかをイメージできていない可能性があります。そういった人に日々の生活との関連を考えてもらう機会を提供することで、防災を促進できるかもしれません(大阪大学・野元)。
参考
Hulleman, Chris & Harackiewicz, Judith. (2009). Promoting Interest and Performance in High School Science Classes. Science (New York, N.Y.). 326. 1410-2. 10.1126/science.1177067.