IoT×ナッジで老人ホームに住む高齢者の健康行動を促す
概要
介護付き有料老人ホームの京都ゆうゆうの里では、平均年齢80歳以上の100名程の高齢者が日常的にビーコン(低消費電力の近距離無線技術を使った発信機)を持ち運びながら暮らしている。
3カ月に一度、自分自身の生活を振り返ることができるような紙のレポートが配布されるとともに、共有スペースに設置されたタブレットで、移動距離などの活動量を確認することができる。
本研究では、高齢者を無作為に介入群・統制群の2群に分けた。介入群では、以下のように紙のレポートとタブレットの両方を使って、2段階に分けてタブレットの利用を促すナッジメッセージを提供した。
1段階目のナッジ・メッセージ:個別にお届けしている紙のレポートの裏面に、「##日から##日まで、てくてくタブレットで「5問連続京大クイズ」に挑戦できます。期間限定ですので、お見逃しなく」のメッセージを追記した(締切強調・損失強調メッセージ)
2段階目のナッジ・メッセージ:「5問連続京大クイズ」をタブレットで回答した人には、最終画面で「次に いつ てくてくタブレットを使いますか?」と質問して、回答してもらった(コミットメントナッジ)
統制群にも、1段階目のレポートと2段階目のクイズは提供されたが、「期間限定ですので、お見逃しなく」というメッセージや「次に いつ てくてくタブレットを使いますか?」という質問は提示されなかった。
介入前から介入後16週間の日々のタブレット利用回数は以下の通り:
- 4週ごとに点線が入っており、灰色の1週間が「介入」を行った週で、赤が介入群、緑が統制群の平均利用回数を示している。
- 介入前は両群ともに同じような利用状況で、介入週には介入群の利用回数が統制群に比べて増加したものの、終了直後は一旦その差は観察されなくなった。
- しかし、終了から数週間過ぎた頃からまた、コンスタントに介入群が統制群よりもタブレットの利用回数が多くなった。
1日あたりの利用回数を4週間ごとにまとめて、群間の差を見ると、第2期、第3期において、介入群の方が統制群よりも統計的に有意に多くタブレットを利用している。そして、この効果は主に男性参加者が牽引していた。
本研究結果から、2段階のナッジ・メッセージにより高齢者、特に男性高齢者の活動量を増加させられる可能性が示唆された。
対象者
主に自治体の保健・医療担当部署の方
ひと言メモ!
複数のナッジを組み合わせることで、ナッジがより効果的になる可能性が示されています。また、介護予防において重要となる、高齢者を対象とした政策を検討をする上で大変参考になる事例です。(PolicyGarage・伊豆)
資料
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出所:JAMDA