【海外研究】HPVワクチン接種率向上のための医療従事者に対する介入
概要
HPVワクチンの接種率向上のため、クリニックの医療従事者に対して介入を行ったアメリカでの事例。クリニックの医療従事者に対し、ワクチン接種の促し方のトレーニングを行った。
介入群のクリニックは、①告知群(初めに患者に対してHPVワクチンを接種することを告知し、患者が求めた場合にのみ、ワクチンに関する懸念を払うような説明と接種の推奨を行う)、②対話群(患者の親子とワクチンの効果などに関する会話を進めた後、ワクチン接種を推奨する)の2つのうちどちらかのトレーニングを受けたのち、患者の診療を行った。
対照群のクリニックでは、トレーニングを行わず、通常通りの診療を行った。
結果、対照群に比べて、告知群のクリニックにおけるHPVワクチン接種率が統計的に有意に高かった(差5.4%、95%信頼区間:1.1%~9.7%)。層別解析では、女子(4.6%の差)、男子(6.2%の差)ともに増加した。対話群と対照群とでは、統計的な有意差は確認されなかった。
対象者
主に自治体の医療・健康を担当している部署の方
ひと言メモ!
医療従事者に対し、患者がワクチンを接種する前提で説明するトレーニングを行うことで、ワクチン接種率を向上させたナッジです。ワクチンを接種する前提で話すという、デフォルトの変更によって行動変容が起こったと考えられます。
潜在的な接種者である国民や住民への直接的な介入ではなく、ワクチン接種を行う医療従事者に対する介入は他にない面白い試みです。HPVワクチンの接種率向上は喫緊の課題だと思うので参考になるかもしれません。(大阪大学・野元)
参考
Brewer NT, Hall ME, Malo TL, Gilkey MB, Quinn B, Lathren C. Announcements Versus Conversations to Improve HPV Vaccination Coverage: A Randomized Trial. Pediatrics. 2017 Jan;139(1):e20161764. doi: 10.1542/peds.2016-1764.