【海外研究】ナッジによる欠席率低減施策
概要
子供たちの学校欠席率を引き下げることを狙ったナッジ介入の事例。カリフォルニア州の10個の学区内の幼稚園生から小学5年生を対象に、保護者に対してメッセージを送る介入を行った。
介入は2パターンあり、
①低学年時の日常的な出席の重要性と、その日までに子供が合計何日欠席したかの報告が書かれた郵便物を受け取る
②①に加えて、親族・友人など子供の学習や出席をサポートしてくれる人々に連絡を取るように保護者に促す内容の郵便物を受け取る
の2つの介入が行われた。一方、対照群の家庭には一切の介入を行わなかった。
結果、介入群における平均欠席日数は6.37日であった一方、 対照群 では6.9日であり、対照群に比べて年間の欠席日数が7.7%減少した。また、登校日の10%以上を欠席している子供の割合は、介入群で4.64%であった一方、対照群では5.45%であり、介入によって慢性的な欠席を14.9%減少させたことがわかった。
出所:Robinson et al.(2018) p.17 Figure 2に加筆
対象者
主に自治体の教育担当部署の方
ひと言メモ!
親への介入によって子供の学校の欠席日数が減ったというナッジ事例です。子供本人ではなく、親に対する介入である点が興味深いです。「子供の出席率を上げたい」場合、出席行動の主体は子供であるため、子供に対するナッジを考えがちだと思います。しかし、幼い子供にとっては、親の意向は自分の意思以上に大きな影響を持ち得るため、親に対するナッジの方が大きな影響を持つことも考えられます。このように、ナッジを考案・適用する際は、「誰に適用するのがベストなのか」の視点を持つことも大事かもしれません(大阪大学・野元)。
参考
Robinson CD, Lee MG, Dearing E, Rogers T. Reducing Student Absenteeism in the Early Grades by Targeting Parental Beliefs. American Educational Research Journal. 2018;55(6):1163-1192.