【海外研究】臓器提供促進ナッジ
概要
臓器提供の新規登録率を上げるためのナッジによる介入の事例。オンタリオ州の公共施設を訪れた人に対して、ナッジによる様々な介入を施す実験を行った。
対照群には、既存の登録フォームを簡略化したフォームの配布を行った。介入群では、対照群で配られた簡略化されたフォームに、様々なメッセージを添えたものを配布した。
介入①(情報提供):臓器提供に関する情報が書いてある冊子を来場者に配る。
介入②(互恵的利他性に基づくメッセージ):「もし、あなたに移植が必要だとしたら、移植を受けますか?もしそうなら、命を救うために、今すぐ登録してください。」(原文 “If you needed a transplant, would you have one? If so, please help save lives and register today.”)
介入③(自分や自分に関係した人が臓器提供を受けられない状況をイメージさせるメッセージ):「あなたやあなたの愛する人が移植を必要としていて、移植を受けられないとしたら、どう思いますか?命を救うために、今すぐご登録ください。」(原文 “How would you feel if you or someone you loved needed a transplant and couldn’t get one? Please help save lives and register today.”)
介入④(他人や他人に関係した人が臓器提供を受けられない状況をイメージさせるメッセージ):「自分や自分の大切な人が移植を必要としているのに受けられない人の気持ちをどう思いますか?命を救うために、今すぐご登録ください。」(原文 “How do you think people feel when they, or someone they love, need a transplant and can’t get one? Please help save lives and register today.”)
実験の結果、臓器提供の新規登録率は、フォーム簡略化前が3.0%、対照群で4.1%、介入①で5.9%、介入②で7.4%、介入③で5.0%、介入④で4.9%となり、互恵的利他性に基づくメッセージが一番効果的であったことが分かった。
対象者
様々な分野で応用できると思います。
ひと言メモ!
ナッジの様々な要素が入った研究で非常に参考になると思います。特に互恵性を用いたメッセージは活用しやすいのではないでしょうか(大阪大学・野元)。
参考
Robitaille N, Mazar N, Tsai CI, Haviv AM, Hardy E. Increasing Organ Donor Registrations with Behavioral Interventions: A Field Experiment. Journal of Marketing. 2021;85(3):168-183.